エンジニアのキャリアパスと役職定義
キャリアパス

エンジニアのキャリアパスと役職定義

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技術推進室の宇津井です。

今年はエンジニアのキャリアパスを書いた記事を多く見ましたので、世の中でも整備する動きが広まっているのでしょう。

ここ最近は通常業務の傍らでキャリアパスとか役職定義のようなものを作るのに大きく時間を使っていました。 (これも立派な業務ですし、これが私にとっては通常業務なのかもしれません)

折角なので社内向けの資料を一般公開できるように一部編集しました。良かったらご覧ください。

キャリアパス1

##なんで今キャリアパス? 当社はもともと以下のようなキャリアパスを設けて、各々のパスに基づいて役職定義をしていました。

キャリアパス2

これは様々な歴史を歩んできた結果なんですが、つぎはぎを重ねたので社内でも以下のような疑問があがっていました。 (当社は創業14年です!)

  • なんでWebマスター(WM)が存在しないの?
  • シニアWebマスター(SWM)とシニアシステムアーキテクト(SSA)は同じシニアが付くのに同格じゃないんだ
  • リーダー(L)とシステムアーキテクト(SA)の違いは?
  • どの職位になるとどれくらいの給料になるの?
  • 上位職種がどんずまりじゃない?偉くなれるの?
  • 役職持ってる人って全員が全員適格なのかなー?

そんな疑問に一貫性を持って答えるのは至難の業です。というか無理でした。 そこで今回思い切って刷新する事にしたのです。

##昔話 唐突ですが軽く当社の歴史を振り返ってみようと思います。(記憶が頼りだったので色々間違ってるかもしれない)

###2004年頃 私の記憶している限り、約10年前の2004年頃はキャリアパスとか存在していなくて当時の役職はリーダー、マネージャー、部長くらいしかなかったと思います。 当初は事業もシンプルで、ただただ成長を追い求めて突っ走っている状況だし、平均年齢も26歳辺りと記憶しています。 この頃は私も若かったせいなのかキャリアパスが存在しないとか、役職定義とか気にも留めていませんでした。気に留めるような立場でもなかったし、存在すら知らなかったかもしれません。 社員数は50人程度、内エンジニアが20名くらいだったかな。

###2006年頃 時は経ち2006年頃。 部長に加えて本部長だったり、副部長だったり、色々な役職が出来てました。 インターネットを生業にしている企業ですから、企業の成長に技術力が必要なのは言うまでもない事です。 これは今も昔も未来も変わらない事ですが、エンジニアを大切にしたい、尖ったエンジニアが増えて欲しい、といった趣旨でシステムアーキテクト職、シニアシステムアーキテクト職が作られました。 また、社内でエンジニアの比率を50%以上にするという目標が掲げられました。 社員数は80人程度、内エンジニアが30名くらいだったかな。

###2008年頃 様々な役職を作って、多くの方が役職者になりました。 すると以下のような疑問がわいてきます。

  • 役職者ってどうやったらなれるの?
  • ○○さんってどうしてあの役職になれたの?

これに応えるために以下のような役職定義を行いました。当社としては記念すべき第1回となります。

  • 定義(各々の役職がどのような行動をとるのか一文で表現)
  • 求められる力
  • 誰が推薦して、誰が任命するのか

###2009年頃 とある新規事業がヒットして、月に1,000万円の粗利をあげるようにまで成長していました。 その結果に報いるため、シニアWebマスター(SWM)という部長格の役職を作りました。 マネージャ格のシニアシステムアーキテクト(SSA)と名前が似ていて混乱が広がりました。 当時、特定の社員(1人だけ)のためだけにシニアWebマスターという役職を作ったのであまり全体的な整合性とか考えていなかったです。

そして現在に至ります。

##作る過程 キャリアパスだったり役職定義を作るといってもどうしたら良いのかよく解っていませんでした。 こういう時は1人で悩まず皆で考えようと決め、技術系の部室長3名で取り組む事にしました。 また、適宜技術推進室のエンジニアの方達に相談したり、案だし段階で発散してもらったりしました。

###参考書籍 私が参考にしたというか改めて読み直した書籍はこの3冊です。他の方々はまた別の書籍を参考にしてたと思うし、元々様々な書籍を読んだ上で脳内に蓄積された知識をフル活用したと思います。

Team Geek

Team Geek

組織パターン

組織パターン

小さなチーム、大きな仕事

小さなチーム、大きな仕事

###キャリアパス その中でまず検討したのは、キャリアパスです。 キャリアパスはwikipediaでは以下のように定義されています。

キャリアパスとは経営学用語の一つ。企業においての社員が、ある職位に就くまでに辿ることとなる経験や順序のこと。また個人の視点からは、将来自分が目指す職業を踏まえた上でどのような形で経験を積んでいくかという順序・計画を指す

どういったキャリアパスを用意するのが当社ビジネスの成功への近道なのか、また、当社のエンジニアに歩んで欲しいのか、魅力的なのかを議論して、技術系部室長3名の意見をホワイトボードに書きだしたりしていました。 書籍以外に、webだったり他社さんの採用資料なんかも参考に各々が思い描くものを出し合う事から始めたんですが、のっけから3者3様でこれ収拾つくのか?と嫌な汗が出たのを思い出します。(この頃はまだ夏だった) とても重要な決め事だし、中長期的に影響するものなので皆で慎重に議論した結果、役職名は置いといてキャリアパスの原型は出来上がりました。(この頃は夏の終わりくらい)

career_path

###多様なビジネス貢献を認める エンジニアがビジネスに貢献する方法って沢山あります。とにかく良いモノを作る、効率の良い方法・仕組みを追求する、品質を良くする、仲間を教育する、良いチームを作る、良いサービスを作る、ユーザーを集める、、、あげたらきりがありません。

多様なビジネスへの貢献を認めてあげて、柔軟性のある組織にしたいし、それがビジネスを拡大させる鍵になると考えました。

とはいえ道が100通りあったら迷ってしまうので絞る必要はあります。 絞った結果として主に以下3つの貢献の仕方があるんじゃないかな、という事になりました。

マネジメントリード ビジネスリード テクノロジーリード

リードという言葉がついてますが、マネジメントリードの人はマネジメントを中心としてビジネス貢献していくという意味です。 マネジメント だけ で貢献していくという意味ではないので注意してください。

また、マネージャー格の全ての役職はリーダー格の「出来る人」を経由している事も特徴的です。このようにする事で、技術の裏付けが全くない方がマネージャーになる事はありませんし、「リーダー」と「システムアーキテクト」の違いも意識される事が無くなります。

###役職名 このステップが思いのほか長かった。 新たに4職種(SWM/ジェネラリスト/スペシャリスト/出来る人)の名前を3名のメンバーが1人あたり5個以上持ち寄ってしっくり来るものを採用する事にしました。 ※SWMは元々あったけど格も名前も見直そうという事になりました。

実際には各々が10個くらいあげてくる職種もあったので選定する基準を設けました。

役職名選定基準

  • 名刺を渡された時にこの人はこんな仕事するんだろうなって、なんとなく想像出来る名称にする。
  • 英語にしたときに極力通じやすい名称にする

この基準を基に以下の流れで各名称を決定していきました。

  1. 無いな、と思う名称を理由とともに挙げて見る。理由を聞いた上で3人中1人でも無いなと思ったら候補から外す
  2. 残った候補から、なんとなく役割が想像できる役職に絞ってみる
  3. さらにGlobalを考えた上で問題のありそうな名称があるか考察
  4. リーダー格の名称を決定
  5. その名称とつじつまが合うようなジェネラリストの名称を決定
  6. さらにつじつまが合いそうなスペシャリストの名称を決定
  7. あまりつじつまが合わなくても良い気がするけど空気読んでサービスリードの名称を決定
    • サービスリードはエンジニア以外からのキャリアパスも考慮する

1つの役職を決定するのだけで1時間はかかりました。。。(夏が終わり秋の気配)

###役職定義

さて、役職名が決まったので今度は各役職の定義を行っていきます。 大まかに以下のような事を決定していきます。

  • この役職を担う人はどういう人なのか、そのような責務があるのか
  • その責務を果たすために必要な権限
  • この役職になるにはどのような条件があるのか
  • 気になる年収は?
  • 誰にどのように評価されるの?
  • 誰が任命して誰が降格させるの?

これ、役職名より遥かに難しい議論です。 まずは給与レンジを決定して、この給与レンジならこんな役割を担って欲しいよね、それにはこんな権限が必要だよねという流れで各役職、真剣に議論しました。朝までとは言いませんが、深夜まで議論した事が何度もあります。

技術力を図る指標は独自のスキルマップを利用しています。

スキルマップ

##レビュー 出来上がったものを全役員、全部室長、人事、何人かのエンジニアに見てもらい意見を頂きました。

頂いた意見だったり質問に対する回答は、提案内容自体に含めたり、FAQとして提案資料の最後にまとめたりしました。

##上程(pull req) 平常心を装い経営会議に向かい、一通り説明し、質疑応答を繰り返した後、無事に全員一致で可決(merge)されました。(秋も終わろうかという時期)

##積み残し課題(issue) スキルマップは一部未完成なので2014/02までに完成させます。メンバーは技術系部長、マネージャ、システムアーキテクト職のエンジニアです。 また、今回技術系部室長が中心となって設計したのでエンジニア寄りになりすぎた面があります。事業系部室長の思いだったりマネジメントの都合も入れていく必要性を感じています。

##エンジニアへの説明 とても大切な仕組みの変更なので、各技術系部室長がFaceToFaceで伝えています。説明会だったり、面談で説明したり様々です。

##作ってみてどうか これから新しい定義に照らし合わせてエンジニアの皆さんを評価していきます。当社は4半期評価(業績重視)と年次評価(本人の成長、戦闘力重視)が分かれており、年次評価の時期は年に1度の大行事になりそうです。

デザイナーのキャリアパスと役職定義もやろうよという流れに繋がり、既にキックオフ出来たのは良かったです。

これまで長い道のりでしたが、本当の意味で効果が現れてくるのは1年以上先の事でしょう。

今回リニューアルしたキャリアパスと役職定義が当社で働く皆の道標になって、皆がより成長してくれれば何よりです!


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