ソシオメディア UX戦略フォーラム 2014 Winterに参加しました

ソシオメディア UX戦略フォーラム 2014 Winter
- URL: https://www.sociomedia.co.jp/5224
- 日時: 2014年12月3日(水)& 4日(木)
- 場所: ステーションコンファレンス万世橋(東京都千代田区)
〜セミナー概要〜
現在、「UX(User Experience : 利用者体験)」からの戦略が必要な時代を迎えています。「UX戦略」とは、企業戦略として顧客の経験価値を積極的にマネジメントすると同時に、企業戦略の中核にUXを捉えるための組織と活動を管理、運営、推進することを指します。このセミナーでは、UXを戦略的に推進していくための評価指標をどのように設計し、実践していくかについて紹介されました。
メインスピーカー:ビル・アルバート博士
米国ベントレー大学のユーザーエクスペリエンスセンター(UXC)の執行役員
同大学の情報デザイン過程にてヒューマンファクターの兼任教授。
著書
『ユーザーエクスペリエンスの測定 – UXメトリクスの理論と実践 – (原題 “Measuring the User Experience: Collecting, Analyzing, and Presenting Usability Metrics”)』(東京電機大学出版局、ソシオメディア翻訳、篠原稔和監訳)
http://www.amazon.co.jp/dp/4501552905
『Beyond the Usability Lab: Conducting Large –Scale Online User Experience Studies』
http://www.amazon.co.jp/dp/0123748925
『Journal of Usability Studies』の共編集主幹
http://uxpajournal.org/
メインスピーカーのビルさんは、厳密に科学としてUX測定を実現していきたいという想いから、この領域の研究者であり実践者になられたそうです。ベントレー大学の中のUX課程には150人以上の学生が在籍されているそうで、クライアント向けのプロジェクトに取り組むUXセンターがあり、200社以上の仕事を大学の授業の実践として行ってるそうです。すごい。
2日間に渡り、とても参考になる内容でした。以下、セッションの概要です。
Day1-1「UXメトリクス入門 – ユーザーエクスペリエンスの測定とは? – 」
- UXメトリクスとは何か、なぜ必要とされるのか
- UXメトリクスの定義やUXメトリクスの典型的なタイプについて
- UXメトリクスの価値、UXメトリクスをどのように組織で活用するのか
- デザインや開発プロセスの中に、どのようにUXメトリクスを取り入れるか
Day1-2「UXメトリクスの現状 – 欧米のUXメトリクスの最新動向 -」
- 欧米の先進的な取り組みや各種企業/業界団体における最新動向について
- 国内の現況をふまえた今後の進め方についてのヒント、アドバイス
Day1-3「UXメトリクス・ケーススタディ – UXメトリクスをどのように活用するか? -」
- UXメトリクス活用事例紹介、各種分析手法の紹介
Day2-1「UXメトリクスの実践 – ユーザーエクスペリエンス測定のための秘訣 – 」
- どうすればUXメトリクスを組織に効果的に導入できるか
- UXメトリクスによって何を知りたいかを確認する
- データ収集方法の紹介
- UXメトリクスを分析するための一般的な手法の紹介
- おちいりがちな失敗例やその回避策の紹介
Day2-2「UX戦略としてのUXメトリクス – UX活動を推進するためのドライバー -」
- UX戦略を進めていくためのフレームワーク
- 企業組織のマネジメント層が、何からどう取り組んでゆけばよいか
- UXメトリクスがいかにUXの諸活動を企業組織で推進する上で有効か
Day2-3「UXメトリクスの応用 – UXメトリクスの組織への適用方法 – 」
- UXメトリクスを組織の中に適用していく上での具体的なガイダンス
- UXリサーチを行う組織の違いによって、UXメトリクスがいかに適合するか
- UXメトリクスを用いないリスク
- UXメトリクスを適用しようとする組織が陥る共通の失敗例、成功ストーリー
所感
この2日間の内容は、UXメトリクスの概要や、実際のメトリクスの例を取り上げて手法を紹介してくださったりと、とても具体的かつ実践的でした。
個人的にとても印象に残ったのは、下記の3点です。
1.自分たちのデザインフェーズにあわせて、競合との比較・差別化の調査をすすめる方法について
私は当社では新規サービスのデザインを担当することが多いのですが、
このとき、まだ動くものができていないから、と、なかなかデザインの検証ができていないことをふがいなく思っていました。競合に比べどれだけ魅力的か、使い勝手はどうか、自分たちの状態では正しく検証できないと感じていたんです。
しかし、「自分たちがワイヤーフレームだったら、相手もワイヤーフレーム化して比べる。
自分たちが手書きのモックしかないなら、相手も同じように手書きのモックで表現して比べる。」というお話を聞き、なるほど!と。同じレベルで比較できるので、より適切な評価・改善アイディアを出すことができるようになるので、この方法はぜひ取り入れたいなと思いました。
2.ペルソナを検証する方法について
よくアンケート調査やインタビューを通して仮説のペルソナを作成します。そしてそのペルソナに対して体験・サービスを設計していくのですが、しばしばこのペルソナ、仮説ユーザー自体が適当なのか思い悩むことがありました。また、1つのペルソナでは語りきれないので複数のペルソナを作成することもありますが、どのペルソナに近い人がどのくらいの割合いるのか、など、ログ分析などで行動・アクションによるユーザーの違いを知ることはできましたが、より定性的なユーザーの思考・志向性などは確信を得にくいと思っていました。
このもやもやに対しては「ユーザー自身に、自分がどのユーザー像に近いか答えてもらう」という検証方法があると教えていただきました。
「あなたの利用の動機はどの人に一番近いと思いますか?」といった質問で、もっと理解を深めていけそうです。こちらも、今後ユーザーアンケートやインタビューで取り入れてみたいなと思いました。
3.組織のUX文化・成熟度に応じた、デザイナーのアプローチ方法について(組織にUXデザインの文化を根付かせるためのコツ)
GMOメディアという組織にUXデザインのためのプロセスの理解を得られるよう、いろいろやりはじめて…活動しはじめて3年目になるのですが、ただ「やりたいんです!重要なんです!」と言うのではなく、自分たちの状況・ステージを把握し、その場に一番最適な取り組みをすすめ、成果をアピールすることが大切だと、改めて学びました。
UXメトリクスの成熟度
- Unaware:限られたリサーチ、メトリクスの価値が伝わってない。どう始めたらいいかわからない
- Starters:メトリクスを使い始めた段階。補完的に補助的に使っているが意思決定やゴール決定にうまく使えてない。
- Regulars:標準的なUXメトリクスを頻繁に使っている。デザインの決定を特徴づける一助として活用してる。日々つかって価値を取得している状態。
- Leaders:メトリクスが戦略的な決定を支えている。ビジネスゴールに結びついた新しいメトリクスを作り出す。新しい洞察をもたらしている。
当社はここでいう、Startersまではきているのかなと感じます。あるチームではRegularsに近いところまでいけているかもしれません。ユーザーインタビューによるインサイトを得る機会を設けたり、アンケート、アクセスログの分析など積極的に用いて、検証することは日常的になっているところもあります。
しかし、その知見が全社に浸透しているわけではなく、それぞれのチームのノウハウとして蓄積されているような状態です。また、ビジネスゴールに結びつき、貢献度を評価できるところまでは至っていないのではないかと感じています。以下、聴講中の私のメモで、今後取り入れるべきと感じている項目です。
成熟度の段階をあげていく要所
UX活動へのサポートを受ける(得る)
- シニアマネジメントに他のマネージャーを説得するのを助けてもらう
- 戦略的にUXメトリクスを盛り込む
- 複数チームを横断してコーディネートする
- ex)デザイン、開発、サポート、ディレクション・・・
- 予算を確保する
- スタッフをとる、専門家に発注するなど
- 予算を確保するのは、UXにちゃんと取り組むんだ!っていう意思表明
UXにまつわる企業文化をつくる
- 共通ビジョン、マネジメントからスタッフまでこの活動に共感できること
- UXメトリクスをもちいて評価されていること
- 短期的ビジネスゴールよりもユーザー体験の重要性が優位に語られること
- UXメトリクスでリリース品質を満たせていないという結果だった場合、必要があればローンチを遅らせる勇気があり、決断ができること
推進のチームをつくる
- 多様性のあるメンバーで構成する
- デザイナー、エンジニア、サポート、、、
- 定質的、定量的手法の両方の経験を持つ。活かす。
- 互いから、チームの外から学べる
- 独立・中立なチーム
適用する機会を自ら作る
- 予算を調達して、正しいリサーチを行う
- どこから予算がでるのか考える、働きかける
- 社内でも注目を集めるプロジェクトでメトリクスを行う
- 適用するために十分な期間が必要だということを理解してもらう
- サービスチームがフィードバックを受け入れやすいようにする
価値を提供する
- マネジメントに結果を共有する
- 行動に移せるような解決プランを提案する
- UXのアプローチをとったあとのBeforeAfterなど、影響の測定結果を示せること
UXメトリクスを実施するステップ
- プロジェクト定義
- プロジェクトゴールとKPIを定義
- 会社にとって何をもって成功というのか、UXの観点から見定める
- 使いやすさ、ブランド認知、エンゲージメント、etc….
- 役割と責任を決める
- 人員配置を確認
- キーとなる関係者を特定し、働きかけ、理解と協力・応援をお願いする
- 予算やスケジュールなどの制約を見極め、できることからやる
- 計画
- スケジュールを確認する
- 最適な手法・メトリクスを判断する
- データ収集戦略を決める
- サンプルサイズの決定
- サンプルをどこから調達するのかなど
- 考えられるリスクと障壁を特定する
- プロジェクトスケジュールを決める
- データ収集
- 発見
- どのような方向性でデザインすればいいのかを見つける
- デザイン/評価
- 形成的(モデレートするタイプの、例えばコンテクストインクワイアリーなど)で問題を理解、深刻度を明らかにする
- 検証
- モデレーションなしユーザビリティテスト、アンケート、データマイニングなど
- データの収集
- 被験者のリクルート、サンプルサイズの決定など
- データの妥当性と信頼性を検証する
- データ分析
- データの洗浄(ノイズ、はずれ値を省く)
- 全体像
- ストーリーや全体をつかむ
- 詳細
- セグメンテーション(興味深いトレンドやパターンをつかむ)
- 結果共有
- 重要なステークホルダー、関係者に行う
- 重要なことにフォーカス
- 学んだこと、行動に移せるプランを提案
- 影響測定
- ローンチ後、KPIのプロジェクト定義に対するデータを収集・分析
- プロジェクト定義で定めたKPIを達成したかどうか
- マネジメント層と結果を共有
- プロセスを繰り返す、継続が重要
- 活動でわかったことを広める
- 他の製品、社外
- ローンチ後、KPIのプロジェクト定義に対するデータを収集・分析
- 発見
今後、当社でもサービス開発のプロセスの中にUXメトリクスを取り入れていき、デザイナーとしても挑戦していきたいなと思いました。
もっとユーザーと一緒にいいサービスをつくりたい!UXデザインの文化をつくっていき、サービス開発に貢献したい!そんな仲間を絶賛募集中です!
参考書籍
今回のセミナーで語られた内容は、ビルさんの書籍でも多数紹介されています。
ユーザーエクスペリエンスの測定 (情報デザインシリーズ) 単行本(ソフトカバー)
トム・タリス (著), ビル・アルバート (著), 篠原稔和 (翻訳)
http://www.amazon.co.jp/dp/4501552905
出版されたソシオメディアさんから、本の解説、読み方のガイドが提供されています。
あらかじめこちらのガイドに目を通すことで、さらに読みやすくなるのではないでしょうか。
https://www.sociomedia.co.jp/5295
参考リンク
ソシオメディアUX戦略フォーラム 2014 winter
https://www.sociomedia.co.jp/5224
「UXメトリクス」「UX戦略」は見逃せない重要なトレンドなのだ!
http://www.web-nomi.com/blog/ux%E3%83%A1%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%AF%E3%82%B9ux%E6%88%A6%E7%95%A5%E3%81%AF%E8%A6%8B%E9%80%83%E3%81%9B%E3%81%AA%E3%81%84%E3%83%88%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%89/
ソシオメディア UX戦略フォーラム 2014 Winter イベントレポート
http://www.mdn.co.jp/di/newstopics/39154/
【セミナー参加報告】ソシオメディア UX戦略フォーラム 2014 winter Day 1
http://www.at-manual.com/produce/knowhow/arekore5/uxforum2014winter_1.html